アパートの鑑定評価(簡易鑑定)を依頼される場面は概ね限られています。
多くの場合、中古アパートの売り物がある場合に、収益性に見合った価格はいくらかという評価です。ご依頼者は不動産会社の方もいらっしゃいますが、最近、サラリーマンの方が多くなっています。
アパート一棟の売りの公告には必ず、利回り○○%という見出しがつきものです。
ここでいう利回りとはいわゆる粗利回りで満室想定での年額賃料を販売価格で除した率です。
例えば、2階建、4世帯のアパートで月額賃料¥60,000、販売価格が¥28,800,000とすると、このアパートの利回りは10%となります(¥60,000×4世帯×12ヶ月÷¥28,800,000×100%)。10%の利回りということは、単純計算では10年で投資額が回収されるということです。したがって、10年経過後には、年金と同じように一定の利益が見込まれることから、サラリーマンにとっても比較的安全な投資対象と言えるのかもしれませんね。
賢明な読者の方は、既に理解されていることと思います。そんな都合の良い皮算用ではないだろうと・・・・・
アパート経営と巷間言われているように、アパートを所有するということは経営であって、何もしなくても収益が上がるということではありませんね。収益に対する費用項目を考えなくてはなりません。
アパート経営に係る費用とは、
?@固定資産・都市計画税
?A修繕費(古いアパートだと、衛生機器等の更新、外壁や鉄部の処理等がかかります)
?B水道光熱費(共用部分の電気代、水道代)
?C空室損失相当額(賃貸需要が旺盛な地域か、建物の築年等によって大きく異なる)
?Dテナント委託管理費(不動産管理会社に支払う費用)
?E維持管理費(保守点検費用、清掃費用等)
?F火災保険料
これらの費用は新築アパートで収益に対して20%程度、古いアパートだと40%近くになることもあります。
中古のアパートを購入する場合には、費用的観点からの検討は重要です。中古アパートの場合、前年度、前々年度の費用実績は分かるはずです。不動産業者に依頼してこの費用実績を出してもらい、費用・収益計算を行い、実際の手取り額を把握すべきです。
一般の方のみならず、不動産会社の方も、中古アパートの利回りが最重視されて取引が行われています。よく、利回りが10%とはないとね。なんていう言葉を耳にしますが、利回りが高ければ良いという発想は如何なものかと思います。
利回りが高いということは、それだけその物件に投資する危険性が高いということです。地域的に妥当な利回りというものがある程度形成されていて、その利回りを大きく超える物件は要注意です。
そのような物件は結局、建物の維持管理費用が嵩むとか、建物がぼろぼろで修繕費用が大きいとか、近い将来に費用項目を増大させ収益を圧迫する結果となるのです。