不動産の市場価値と不動産鑑定士による評価価値の違い
不動産の市場価値と不動産鑑定士による価格の表示は、そもそも目的が異なります。不動産鑑定士とは、その評価を専門的な観点から行っていくことを主としています。法律に基づいて制定された国家資格を有したものだけがそれを名乗ることができますので、この人材には高いスキルが求められます。
鑑定士の評価は、市場の適正と異なる傾向が強いです。これは、市場が取引の観点から価格を算出することになるからに他なりません。例えば、市場価値とはいっても地域差によって誤差が生じることも珍しくありません。地価が高い地域であれば、需要が高くなるので建築物を含めた価格は外観上で同じ建築物であっても違いが生じることもあります。当然、会社が簡易的に査定を行うケースでは取引を前提にしているためそこに誤差が生じても問題ありません。あくまでも、取引の目安として価値を判断していくことになるため、それが客観的なものとして認識されていくことになります。
また、こういった簡易的な査定を行うのには専門的に判断するのが難しいという側面もあります。鑑定士の評価の判断は、確かにそれが合理的で正しいと考えられる方法で行う限りは正しいと認識されます。しかし、その結論に至る過程での方法や形式が間違っている場合には、その結果は受け入れられません。そして、この評価の基準には専門性が問われることになりますので、個別具体的な検証をしない市場価値とは異なる結果がでても珍しくない現状です。間違いがないようにするためには、時間をかけて精査しないといけないのでコストも必要になります。現実的にも、鑑定士の役割として取引とは別に適正な価格を見極めるという目的が存在します。言い換えると、現状で存在している不動産の市場価値が本当に正しいかどうかもわからないわけです。
この目的の違いは、実は価値の違いにおいて最も重要なポイントです。なぜかというと、市場の物件や土地の価値はあくまでも誰かに対して売却できそうな価格のことを指しているにすぎないからです。その物件や土地の価格を表しているわけではなく、その不動産を売却の対象として見た場合にどういった価格が適正なのかを市場で判断していくことを目的としています。反対に、鑑定士の価値は必ずその価格で売却をしなくてはならないというわけではありません。文字通り、そのように評価してもらったことについて証明をしてもらうことができますので、それだけで十分な役割が生まれます。だからこそ、ここには違いが生まれるのです。