不動産鑑定士の仕事の一つとして「地価公示」があります。国土交通省が毎年1月1日付の土地の価格を発表するものです。(但し発表は3月後半です)
この「地価公示」の作業は1月前半がピークです。
一般的な鑑定評価は単発の案件で、依頼された対象不動産に集中して評価作業をするものですが、「地価公示」は複数の標準地を同時に評価するため、価格バランスや広域的な資料の検討・分析が必要となります。
実はこの作業は、そういった意味で、不動産鑑定士にとって有意義です。
さて、平成3年頃にバブルが崩壊してから、地価はずーっと下落してきており、何年か前にちょっとだけ都会でプチバブルにより上昇した地点があったものの、リーマンショック以降は、また下落を続けています。
そんな地価下落局面の中、地価公示作業で取引事例の分析をしていると、地価がガクンと下落している地域と、ジワジワと下落している地域が見えてきます。それは次のような特徴からです。
地価がガクンと下落している地域は、突然取引がなくなる、または極端に数が減ります。この間まで取引がまずまずあったのに、ここ半年間はほとんど見られない、という事象が起きるのです。これは地方の人口10万人以下の市町村に多いと思われます。
一方、ジワジワと下落している地域は、取引がそこそこみられるので、ある程度価格水準の下落が把握できます。これは比較的都市化が進み、人口が増加している住宅地域に見れらます。
ちょっと種明かしをすると、取引事例を地図上にプロットしていけば、空白のエリアができますから、そのエリアが、地価がガクンと下落している地域だと一目瞭然にわかるわけです。このガクンと下落している地域は、再び取引が見られるようになると、明らかに以前とは違う地価水準になっています。
なぜそうなるかを分析するには、人口の増減だけでなく、商業店舗や工場の進出・撤退、都市整備の状態など、色々な事を検討しなければなりません。が、ここでは省略。
さあ、問題はその空白のエリアの下落率はどのくらいかと言うことですが、取引事例がほとんど無い中で、答えを出すのはとても難しいです。具体的にどうやって決めるかは、いろいろ方法があると思います。これで頭を悩ませている不動産鑑定士はきっと多いことでしょう。
私も含めて。