林地は立木の育成に適しているかどうかの自然的な条件により、価格は大きく左右されます。また、切り倒した木を市場に運ぶコストに大きく依存するため、林道の整備状態や市場までの距離が重要となりますが、日本の山林は地形的に急峻な地勢が多く、また林道の整備が遅れているため、切り出しコストが割高になっています。また人件費の上昇、安価な輸入材との競合により、利益になかなか結びつかないため、放置されたままの山林が増えています。
木材の生産のための伐採は殆ど行われておらず、市場に出回っているのは国有林や県有林で民間からは間伐材が主体となっている地域が多いのも事実です。
林地の評価の一つの方法に、収益還元法があります。これは長期間にわたり立木を育成し、それを間伐・伐採・販売・植林を行うというサイクルの中で、得られる林業収益からコストを差し引いて求めるものですが、収穫量、収入項目及び造林費については林業経営が長期的な観点に立つことから流動的にならざるを得ません。また、実質林業利率については年々下落している傾向にあって、実態の把握は困難な状況にあります。木材価格の低下等を背景とした現況の林業経営に基づく生産性・収益性は低く、収益価格は補助金を考慮しない限りマイナスとなるのが一般的なようです。また、実際の取引において立木の収益性に着目して取引を行われることは少なく、林業経営の将来的な不透明感から、林業経営拡大を目的とする需要者はなかなか見出せません。したがって、収益還元法を適用できる場面は一部の地域を除き難しい状況になっているものと思います。
林業の盛んな、いわゆる森林県では、外資による森林の買収が行われ、本国から連れてきた安い労働力で森林を皆伐してしまい、皆伐した後は植林されずに放置されるという事例があり、問題視されているようですが、一方、二酸化炭素の排出権取引に係る森林売買も準備が整いつつあり、生産財・消費財としての木材価値よりも環境財としての森林価値が認められ始めています。
最近、寄付とボランティア活動を主とする森林再生パートナーとしての企業参加が増えています。有名企業名を冠した「○○の森」というのを聞いたことがありませんか?これらの多くは企業の森林再生パートナー林です。
森林としての機能は単に立木の価値に止まらず、水源かん養、大気の浄化、土壌形成、生物保全、景観形成など多岐にわたり、生活環境に寄与する森林としての価値を有しているということに多くの人は知っています。
林地の鑑定評価においては、生産財・消費財としての価値は当然考慮しながら、環境財としての林地の価値の把握にも努める必要性がありそうです。